ーーピンポーン。



玄関のチャイムが鳴る音が聞こえてきた。


帰って来て、着替える気力もなく制服のまま寝ていた私は、そのチャイムの音で目が覚めた。


今、何時?


自分の部屋の壁にかけてある時計を見ると、時計の針は18時を指していた。


重たく気怠い身体を起こす。


その間にも2、3回、玄関のチャイムが鳴っていた。


はいはい、今行きますよ。


部屋を出て、玄関の前に行く。



「どちら様ですか?」


「換気扇の定期検査に参りました、◯◯の鈴木(スズキ)という者ですが……」



◯◯?聞いたことない会社名だけど……。


しかも換気扇の定期検査?


定期検査ってことは、定期的に検査をしてるわけで、でもそんなの初めてだし。


いつもはお母さんが対応してたのかな?



「あ、今、開けます」



玄関を開けると、マスクにメガネをした作業着の男性が1人立っていた。


手には仕事道具と思われる工具箱とカバンを持っていて、作業着の胸には社員証が見えていた。



「わたくし、◯◯の鈴木と申します」



鈴木と名乗った男性は社員証を私に見せるようにそう挨拶をした。



「いつもは昼間に点検に来てたんですが、昼間にいらっしゃらなかったみたいで、こんな時間になってしまいました」


「あー、今、両親がいなくて私1人なので……」


「そうですか」



やっぱり昼間に来ていて、お母さんが対応してたんだ。



「さっそく換気扇の定期検査に入らせて頂きたいのですが、宜しいですか?」


「はい、どうぞ」


「失礼します」



男性は丁寧にお辞儀をして、靴を脱ぐと玄関を上がった。



「前回はキッチンの定期検査をしましたので、今回はお風呂場とトイレになります」


「よろしくお願いします」



男性にトイレとお風呂場を案内して、私はリビングに戻った。