マンションの前に着いた。


シートベルトと外して、助手席のドアを開ける。



「ありがとうございました」


「いや、担任として当たり前のことしただけだから」


「そ、そうですね」



水島先生の言う通りだ。


特別なことをしてもらったわけじゃない。


両親がいなくて迎えに来てもらえないから、水島先生が送ってくれただけ。


ただ、それだけのこと。



「部屋まで、送ろうか?」



助手席から降りようとした時、水島先生がそんなことを言ってきた。



「だ、大丈夫です」



私は、水島先生の方を見ることなく、車から降りた。



「今日はゆっくり休めよ」


「はい」



水島先生の方を見て、笑顔でそう答えた。



「じゃあ……」


「はい、ありがとうございました」



水島先生が車をゆっくり出す。


私は水島先生の車が最初の角を曲がるまで、車を見ていた。