「…………帰って」
少しの間を置いて、呟くようにそう言った。
「わかった、帰るよ」
聖はそう言って、リビングのドアを開けた。
「なぁ、桐野？」
「何？」
「やめとけ……」
リビングのドアの前に立ったまま、こちらを向くことなく聖はそう言った。
「はっ？」
「あいつはやめとけ……」
振り返りそう言った聖の目は少しだけ悲しそうだった。
「聖には関係ないじゃん。水島先生の何をわかってそんなこと言うの？」
「確かに俺は関係ない」
「だったら！」
「でも俺にはわかるんだよ。あいつはロクな男じゃねぇよ」
「はっ？意味わかんないし。水島先生はあんたと違って優しいし。性格悪いあんたに水島先生のことを言われたくない！てか、もう帰ってよ！」
「ちゃんと戸締りしろよ。おやすみ」
聖はそう言って、リビングを出て行った。
パタンとドアが閉まる音がリビングに響いた。
何で聖にそこまで言われなきゃいけないの？
私が誰を好きになろうが関係ないじゃん。
ロクな男じゃないって、何でそんなことがわかるのよ。
水島先生は絶対に違うから……。
