「ありがとうございました」
マンションの前。
車から降りて、水島先生にお礼を言った。
「ありがとうございました」
聖も水島先生にお礼を言う。
しかも笑顔で。
「じゃあ、また明日」
「はい」
水島先生が助手席の窓を閉め、車をゆっくり走らせる。
最初の角を曲がるまで、私は水島先生の車を見ていた。
車が角を曲がり、聖の方を見ると、さっきまでの笑顔が消えていて鋭い目つきで一点を見つめている。
それを見た瞬間、背筋がゾクゾクとなった。
「聖?」
「あ?」
私の方を向いた聖は、いつもの聖に戻っていた。
なんで、あんな鋭い目つきで見ていたのか、今の私には何もわからなかった。



