「僕まで送ってもらって、すみませんねぇ……」
「いえいえ、いいですよ」
今、水島先生の車の中。
結局、水島先生に車で送ってもらう事になったんだけど、なぜこの男も一緒なのか……。
何が悲しくて後部座席に聖と並んで座らなきゃいけないのよ。
もし聖がいなかったら、カバンが鎮座している助手席に私が乗るはずだったかもしれないのに。
「聖先生のお宅は……」
「あぁ、桐野と同じところで大丈夫です」
「ご自宅まで送りますよ」
「僕、桐野と同じマンションなんですよ」
聖が身を乗り出すようにして笑顔でそう言った。
「そうなんですか?」
「えぇ、知らなかったですか?」
「えぇ、まぁ……」
誰もあんたの住まいなんか興味ないっつーの!
「しかもお隣同士なんですよ」
「えっ?」
バックミラーで水島先生が後ろを見る。
目が合い、思わず下を向いてしまった。
てか、いらんこと言わないでよ!
「まぁ、たまたま偶然なんですけどね」
聖がクスクス笑う。
当たり前です。
必然的にお隣になられても困ります。



