連れて来られたのは校務員室。
周りにいた女子たちは、いつの間にかいなくなってた。
「何で、校務員室?てか、聖って数学教師じゃなかった?」
「先生って呼べよ」
「嫌だ」
絶対に先生って呼んでやらないもんね。
「校務員の天野(アマノ)さんが、怪我をして休んでるみたいで、復帰するまで俺が天野さんの仕事もすることになった」
校務員室のタンスを開けてながらそう言う聖。
あの校務員さんって天野さんっていうんだ……。
白髪混じりで、作業着を着て、長靴履いて、麦らわ帽子を被ってて、いつもニコニコしてて……。
挨拶すると穏やかな口調で挨拶をし返してくれる、おじいちゃんみたいな校務員さん。
「これに着替えて、外に出て来い」
聖がタンスから出してきた、作業着を私の方に投げてきた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!あんたが校務員さんの代わりをするのは、あんたの勝手でしょ?私まで巻き込まないで」
「お前さぁ、俺が今日、どんだけ恥をかかされたと思ってんだよ」
「えっ?」
「しかも他の先生にいろいろ聞かれるし、校長には呼ばれて説教されるし……。お前と家が隣同士だから、変な気起こさないで下さいねとか言われてさぁ。誰が変な気起こすよ」
「ゴメン……」
「だから、その償いとして手伝え」
聖はそう言って、さっさと外に出てしまった。



