パスケースを受け取り、もう一度、お礼を言って歩き出そうとした時……。
「あの!」
再び男性に呼び止められた。
足を止め、振り返る。
「もしかして、どこかでお会いしましたか?」
「えっ?」
「さっき、僕の顔を見て驚いていたので……それに……」
「あ、えっと、知り合いに似てたので……つい……すみません……」
男性が何かを言いかけたのを遮るようにそう言った。
「それに、名前……」
「えっ?」
男性がスーツの内ポケットから名刺入れを出し、その中から1枚名刺を取り出して、差し出してきた。
それを受け取る。
「…………ッ!」
再び声にならない声が出る。
その名刺に書いてあった名前。
ーー白井 聖。
漢字の名前の上に、ローマ字で“Shirai Hijiri”と書いてあった。
胸がトクリと跳ね上がった。
聖は名字が聖で、男性は名前が聖。
名字と名前が同じって……。
しかも顔が聖に似ていて……。
初めて会った人なのに、たまたま私の落としたパスケースを拾ってくれただけなのに。
こんな偶然ある?



