それにしても暑いなぁ……。
駅から自宅まで、そんなに距離はないのに汗が吹き出る。
カバンからハンドタオルを出して、額に出た汗を拭った。
「あのっ!落としましたよ!」
突然、後ろから声をかけられ、足が止まる。
えっ?私?
「あの……これ……」
さっきよりも声が近い。
ゆっくり振り返る。
「…………ッ!」
目の前に立っていた男性。
その男性を見て、私の口から声にならない声が出た。
その時、周りの騒めきが聞こえなくなり、私の胸の鼓動だけが耳に響く。
目の前にいる黒いスーツを着た男性が何か言ってるけど、それも耳に入ってこない。
「聖……」
私がそう言った時、首にかけてあったクロスのネックレスが光った。
と、同時に周りの騒めきが耳に入ってきた。



