玄関を開けると……。
壁にもたれてかかって、足を投げ出し、座り込んでいる聖の姿が目に入った。
顔を歪め、苦しそうに息をしている聖。
手でシャツの胸元をギュッと掴んでいた。
さっき、外で聞いた音は、泥棒と揉み合っていたわけじゃなく、聖の身体が壁に当たった音だったんだ。
座り込んでいた聖の上半身が倒れていく。
「聖!」
私は聖の名前を叫んで、側に駆け寄り、聖の身体を支えたけど、そのまま倒れて膝枕状態になってしまった。
相変わらず苦しそうにしている。
「お前さぁ……何で、来たんだよ……」
「聖、大丈夫?今、救急車呼ぶからね」
聖の質問を無視して、泣きそうになるのをグッと堪えて、カバンの中からスマホを出した。
「呼ばなくていい」
「でも……」
「いいんだ……」
冷たくされた日から、目も合わせてくれなかったのに、今はちゃんと私の目を見てくれている。
「このままだったら、死んじゃうよ」
堪えていた涙が溢れだし、ポタポタと落ちていく。
「なぁ、桐野?俺は、約束を破ってしまったんだ」
「約束?」
「あぁ、だからこうなる運命なんだよ」
聖は手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
ビクンと肩が揺れて、こんな時でも胸がはち切れそうになるくらいドキドキしてる。
「俺、桐野に、嫌われようとして、冷たくしたけど、でもダメだったわ。自分の気持ちには嘘はつけねぇな」
聖はそう言って力無く笑った。



