しばらく待っても聖は出て来ない。
留守、かな?
それとも居留守?
もう1回だけ鳴らして出て来なかったら諦めよう。
さっき後悔が込み上げてきたばかりなのに、そんな思いの方が勝ってしまって、私はもう一度、呼び鈴を押した。
呼び鈴の音が廊下に響くだけ。
やっぱり留守なのかな?
明日、管理人さんに鍵を渡そう。
そう思い、自分の家に帰ろうとした時……。
ーードンッ!
何かにぶつかったような、何かが倒れたような音が聖の家の中から聞こえてきた。
えっ?
聖?
私は聖の家の玄関に戻り、ドアノブを回す。
鍵がかかっていて開かない。
「聖?」
外から呼びかけてみたけど、応答がない。
まさか泥棒?
聖と泥棒が揉み合って……。
とりあえず警察に電話しなきゃ。
そんなことを思いながらも、カバンの中から出したのはスマホではなく鍵。
頭ではいろんな考えがグルグル回っていたのに、気付くと、私は玄関の鍵を開けていた。



