教室のドアが開いた。
「きり、の?」
悲しそうな、困ったような顔をして私を呼ぶ水島先生。
さっきまでギャハハと笑いながら楽しそうに電話をしていた水島先生は、もうここにはいなかった。
「ホ、ホッチキスの針がなくなってしまって……」
私は床に落ちたホッチキスを拾いながらそう言った。
「替えの針がなかったから、水島先生に……だから……そしたら水島先生の声が聞こえてきて……えーっと……だから、その……あ、あの、もう帰りますね……」
涙を必死に堪えながら、水島先生の顔を見ないようにそう言って、深々と頭を下げた。
水島先生に背を向けて、数学準備室まで走って行った。
「桐野!待って!」
私の後を追いかけて来る水島先生。
数学準備室に入り、ホッチキスを机に置いてカバンを持った。
「桐野、その……ゴメン……」
「何で謝るんですか?私、気にしてないですから、大丈夫です……」
「桐野……」
「失礼します」
再び水島先生に深々と頭を下げ、なるべく目を合わせないように、顔を見ないようにして数学準備室を急ぎ足で出た。
「桐野、待って!」
水島先生が追いかけ来るけど、私はそれを無視して走った。



