ゆっくり顔を上げていく……。 完全に顔を上げた時、私の胸はドクンと跳ね上がった。 少し長めの漆黒の髪。 長めの前髪から覗く切れ長の目。 透き通るような白い肌。 そこにいたのは黒いスーツに身を包んだ男性だった。 しかも男性の手には、さっきの黒猫が抱かれている。 背が高く、細身で俗に言うイケメン。 時が止まったかのように、私は男性を見上げたまま動けないでいた。 ただ、耳に聞こえてくるのはドクドクと鳴る自分の胸の音だった。