「なんか、可哀想だね……」



私はリビングのドアを見たまま呟くようにそう言った。



「はっ?お前、何言ってんの?」



振り向き、聖の方を見る。


少し怒ってるような、呆れたような顔をして私を見る聖。



「別に、あの人を援護するわけじゃないけどさ、でもなんか可哀想だなと……。あそこまで言う必要あったのかな?って……」


「あのなぁ……」



聖が深い溜息をつく。



「じゃあ、あのまま盗聴されっぱなしでも良かったのか?」


「盗聴器を見つけてくれたことには感謝してるよ」


「だったら……」


「だけど、あんな人を追い詰めるような言い方はどうなの?と思って。注意するだけで良かったんじゃない?」



聖が再び深い溜息をついた。



「そんなんだから、あんな男に付き纏われるんだよ!もしかしたら殺されてたかもしれねぇんだぞ?危機感無さすぎだろ!お前、自分が何されたかわかってんのか?」



聖が大声で叫ぶようにそう言った。



「そんな大声出さないでよ!そんなことわかってるよ!」



もう、疲れた……。


両肩に大きな石が乗ってるようにズシリと重い。



「帰る……」



そう言って、ソファから立ち上がる。


もう早く帰って寝たい。



「なぁ、桐野?」


「ん?」



ソファに座ったままの聖を見下げる。



「お前、しばらくここで暮らせ」



聖の言葉に一瞬、時が止まった。



「危機感のないヤツを1人にしとくわけにはいかねぇし……心配だから……」


「………………はぁぁぁぁぁ!?」



私はリビングに響き渡るくらい大声を出した。