ちぐはぐ恋模様

翌日も、その翌日も、翌々日も近藤は駅に来なかった。その代わりか、明智がきてはからかって帰るのがもう1週間続いた。

「つかさ、お前なんで近藤をあんな風に待ってんの?」

帰り際、明智が不意にそう言ってきた。

「……ハンカチ、借りっぱなしだから」
「連絡先とかは?」
「しらない」

短い沈黙が流れる。

「このままあいつこなかったりし…て…」

ぽろっと雫が零れる。目が熱い。鼻がぐずぐずと音を立てる。

「ぁ--」
「いいの!それでも…きっと卒業までには来てくれるから…だから…待ってれば、いいの…」

最悪だ…明智の前でこんなふうになるなんて。きっと笑って『馬鹿じゃねぇの』とか言って、またからかうんだろう。

「ばっかじゃねぇの」

--ほら、ね…

「待ってるだけで何とかなるんなら誰だって苦労しねぇよ。自分で動いて頑張って、それで傷ついて泣くならわかるけど、逃げて待ってるだけで泣かれてもな」

顔を上げると、明智はいつもと違った真剣な表情をしていた。

「近藤の連絡先」

明智が握ってる手の中にはSNSのアカウントから電話番号、メールアドレスまで書かれていた。

「本当にこのままでいいのか?」

静かにそれを受け取り、開く。
携帯を取り出し、一番よく使うSNSを開き、アカウントを打ち込み、メッセージを送る。

「よし、よくやったな」

そういって明智はくしゃりと頭をなでた。このまましばらくわしゃわしゃと髪がぐしゃぐしゃになるまでなでまわした。
今日だけは、明智が優しく見えた。