ちぐはぐ恋模様

after・story

あれから3年経った。
今では俺個人にも仕事が来るくらいに売れ始めた。

正直、最初の一年目は何度帰ろうと思ったことか…。
だけど帰れるはずはなかった。
約束、したから。
あいつも頑張ってるのは知ってたから。

『では、最近人気のアーティスト、鈴音さんです!どうぞー!』

画面越しに何度も見る。
あいつの活躍、歌、演技、ダンス、バラエティ…
今や日本の顔と言っていいほどの人気っぷりだ。
俺はまだ帰らない。
あいつの人気にはまだまだ遠く及ばないから。

『鈴音さんの初恋はいつですか?』

あるバラエティ番組でこんな質問をされていた。

『初恋…んー、あたし初恋しかしたことないかもしれないです』

『というと?』

『まだ秘密です。世界的に有名になって帰ってくるまで、皆さんにはお答えできません』

俺だけじゃなかった。
あの約束を守るために踏ん張れてるのは、同じだった。

あの日、言わなかった言葉を何年かけても帰って必ず伝える。

「お前が好きだったよ」

あの時みたいにお前は、きっと笑うだろう。
西日の中で茜色の光をこぼして--。