after・story

私は学校帰りに駅で待つのが当たり前になっていた。
待合室の東側、実はここから駅員室がまっすぐに突き抜けて見える。

ここに来るようになってからわかったことは、彼がココアが好きということ。
いつもココアをテーブルに置いてある。
味の好みは同じなのかもしれない。

一時間ほど待って、彼が仕事からあがると一緒に帰る。
前にもまして会話はぐんと増えた。
いつも私が話すのを目を細めて聞いてくれる。

「君、ココア好きでしょ?」

そう言って自販機で買ったココアを差し出すと、キョトンとしたあとに笑った。

「ココアが好きなのは君だろ?」

なんで、知ってるんだろう。
驚かせるつもりが、逆に驚かされている私を見てくすくすと笑ってる。

「君がいつも飲んでいるんじゃん。あそこは俺からも君は丸見えなんだけど?」

…やられた。
さりげなくこういうところも抜け目がない。
これじゃいつまで経っても負けっぱなしだ。

「そう怒るなよー。君と同じものを共有したかったんだよ」

そう言ってココアを美味しそうに飲む。

「ほら、甘くて美味しい」

差し出されたココアを私も一口飲む。

「あ、関節キス」

わざとらしい。
別にそんなの気にしたりなんかしない。

「私のだもん。いいでしょ別に」

「それは俺がってことかな?」

「さぁ」

君はもう私のだから。
他の子としたりしたら承知しない。

今日のココアはいつもよりも甘かった。