自分の体温とは違う別の温もりに抱きしめられて目覚めた。

目を閉じている整った顔に無精髭が生えていても素敵だと思える彼に、昨日、いや正確には数時間前まで抱かれていたのだ。

杏奈と何度も呼ぶ声

だけど…好きだとは言ってくれなかった。

抱きながら、体中に振らせるキスは私の体に痕をいくつも残しているのに…肝心の言葉をくれない。

だから、私は素直に好きだとは言えず、その代わりに彼の唇にキスをして届かない言葉を伝えた。

腫れたようにジンジンする唇は、彼とのキスの激しさを残している。

彼の唇は?

無意識に彼の唇を撫でるように触れると指を食む唇に驚く。

そのうち、舌を絡めてきて離してくれない。

「起きてるでしょう」

彼の頬を押さえ、指を引き抜こうとすると妖艶に微笑む男。

「俺の顔を押さえつける女なんてお前が初めてだ」

そう言って、のしかかってくる。

唇に触れていた手首と頬を押さえていた手首を掴み、頭上で押さえつけられてしまう。

「俺の愛し方が足りなかったのか?」

そんな惑わす言葉は私を苦しめるだけだと知らない。

「杏奈…なんとか言えよ」

何も答えない私に焦れる彼は、唇には触れずに胸の頂きに唇をつけ私を攻落させようとする。