なんのことだと彼を見つめたら、突然、手を握られ耳元で囁く。

『そんなかわいい顔であいつを見つめてたら気持ちがバレてるって思わない?』

うそ…
そんなはずない。

好きって言ってないもん。

見てるだけでバレる訳ないじゃん…

トドメを刺すように

『初対面の俺でも気がつくぐらいバレバレだよ』

真っ赤になっていく頬を見られたくなくて下を向いたら、足下に男物の靴が視線に入ってきた。

「こいつにちょっかいをかけるなら勝負は無しにしていいんだぞ」

私と男の間にキューを振り出し、笑っている。

だけど…その笑顔が怖いと感じたのは隣の男も同じだったようで降参ポーズをとって苦笑い。

「ただのあいさつだよ」

「へぇ〜、ただのあいさつ…ね」

怒りを含んだ声に男はたじろぐ。

「あ、俺の番かな?」

いたたまれなくなった男は、その場から逃げようと数歩歩き立ち止まり振り返り

「試して正解だったね」

意地の悪い捨てゼリフを残して台に戻って行った。

「何を試したんだ?」

「……さぁ?なんのことかなぁ」

苦しいごまかしに、五十嵐さんは顔をしかめ不機嫌そうだけど、私は少しの可能性に希望が持てて頬が緩んでいた。