彼の友達は爽やかな笑顔なのに、作りモノの笑顔に見えるのは私だけだろうか?

「どうぞ座ってください。杏奈、詰めてあげないと…」

向かいあって座っていた志乃はコの字のボックス席の中央に移動し私の手を引っ張り隣に誘導してくるから、彼らは私達を挟むように席についた。

志乃の隣は、彼の友達が…

必然的に彼が私の隣に座っている。

これじゃ、逃げれない…

近すぎる距離に戸惑い、身を縮め小さくなる私。

そんな私に彼は

「自意識過剰…何もしないよ」

鼻先でクスッと笑い、ソファの背もたれに背を預け長い足を組んだ。

テーブルの下で組む足は窮屈なのか、外にだすように体を斜めにする。

体のバランスをとる為なのか、彼の片手はソファの背もたれの上に乗せてきた。

その腕が、私の背に当たる。

どうしようかと意識し過ぎていたから彼が私にむけた言葉にムカッときて

「はい?あなたこそ自意識過剰なんじゃないの⁈ちょっと顔がいいからって女がみんな意識すると思ったら間違いだから…」

私の反論に彼もムカッときたようで

「さっき、俺と視線が合ったよな。顔を真っ赤にしていたから俺に気があると思っていたんだけど、違ったか⁈」