元気に振舞っていた彼女は、まだ佐藤さんの事を忘れられないのだ。

今日は、吹っ切る為に彼女自ら計画した飲み会だったのに、運悪く佐藤さんの友人である五十嵐さんに会ってしまった。

五十嵐さんを見ていたら彼を思い出してしまったのだろう…

私は、志乃のせつない苦しみに気づきもしないで、どれだけ五十嵐さんを意識していたのか⁈

志乃の気がすむまでとことこんつきあってあげよう…

2時間の間に志乃の歌った曲は、恋しい人を思うせつない曲ばかり、さすがの男性陣も若干引き気味。

さすがにカラオケ店を出て次へ行こうとは思えなかった男性陣は、またねっと言って居酒屋が密集する路地へと消えていってしまった。

男の影がちらつく女と未練たらしい女の訳ありを相手になんてしてられないのだろう。
まぁ、こちらとしても助かった。

志乃も私も彼らどころじゃなくなっていたのだから…

「さて、志乃さん私ん家で飲み直しますか?」

おちゃらけて志乃の背中をポンと叩いた。

「…ごめん‥杏奈、ありがとう」

「気にしない‥胸の中のモノを全部吐き出しなさい。一緒に泣いてあげるし、解決策も一緒に考えてあげるから1人で悩まないの」