「本当に彼女さんいたんですね…」

落ち込む女性に後輩男性は

「お前に勝ち目ないから諦めろ。あんな甘い表情をして彼女さんに話しかけるセンパイは見た事ない。見てて、こっちが恥ずかしくなったからな」

「まるで、彼女さんを見たような言い方じゃないの?」

確かにそう聞こえる…

「み、見てないよ」

と言いつつ、私を見るのはやめてよ。

「吃るところが怪しい」

何かを察した彼女は私に視線を向けてくる。

値踏みするように上から爪先まで視線が動く。

五十嵐さんに更に擦り寄り、勝ち誇ったたように、フンと鼻を鳴らした感じに悪意を感じるのはどういう事だ⁈

気分が悪い…

「志乃…移動しようよ」

何かあったと気づいた志乃は、隣をチラッと見てから

「どうしようか?」

「そうだね…次どこ行く?」

存在さえ忘れていた男性達が席を立ちだしたので、私達も後に続くことにした。

隣の席から小声で五十嵐さんに声をかける後輩男性。

「いいんですか?」

「あぁ…そうだ。杏奈、寄り道もほどほどにな」

通路を横切る私の手首を掴み、意地悪な笑みを浮かべ手を離す人。

私は、目を見開き驚きを隠せないでいた。