山道を登って行くからどこへ行くのかと不思議だったけど、車で1時間半ぐらい走ったところに、こんな素敵な場所があるなんて‥知らなかった。

大きな門を潜り車を降り、ア然としている間に五十嵐さんは後部座席から小さな旅行用の鞄を取り出していた。

「…どういうこと?」

ただ、口角を上げて笑い鞄を目の前でチラつかせた後、私の空いてる手を握りライトアップされた小道を歩いて大きな玄関前まで歩いて行く。

遅い時間帯だというのに待ちかねていたそぶりも見せないで笑顔で中居さんが労を労ってくれる。

「遠いところまで来られてお疲れだったでしょう?」

そう言いながら五十嵐さんから鞄を受け取っていた。

私は、この現状をまだ飲み込めてなく、ただ立ち尽くす。

「お世話になります」

和かに挨拶した五十嵐さん。

さぁ、どうぞと足元にスリッパを出されては上がるしかなく、その間に、五十嵐さんはさっさとスリッパを履き受付をしている。

彼の後に続いて宿帳に記入しようとすると、そこには既に五十嵐 恭平、五十嵐 杏奈と記入してあった。

驚きを隠せないでアワアワしている私の頭をポンと撫で

「奥さん、行くよ」