気持ちよく感じてしまったキスに、頬を上気させ言い返す言葉も出てこないで、もう、こんな場所でと恨めしげに睨むしかできなかった。

「これ食ったら帰れよ」

テーブルにゴトンと置かれたドリアが2つ。

マスターは眉間をピクピクしながら微笑んでいた。

『俺の店を何だと思ってるんだ。どいつもこいつも…』

ブツブツと文句を言い頭をかいて戻って行く。

「…バカ、マスターに見られてたじゃん。もう、恥ずかしくてこれないよ」

真っ赤になった頬は、なかなか熱を冷ましてくれない。

「気にするな…」

そう言ってドリアにスプーンを差して食べ始める五十嵐さんの表情は澄まし顔。

もう、そっちはいいかもしれないけど…
…気にするなって何?気にするわよ。

「来週、来るのに…」

「……来週?来週っていつだ?三連休か?誰と来るんだ?」

ムッとしだした五十嵐さんにたじろぎ、慌てて説明しだした。

「はっ、クリスマスの三連休の初日に結婚式に二次会も参加だ⁈そんなの出席しないで俺といろ。俺たちの初めてのクリスマスだぞ」

「そんなこと言っても、前から決まってた事だし会社の人の結婚式だから欠席できない」