優しい嘘はいらない


今のキス?…

口元を手のひらで押さえ辺りを見回すがお客は私達2人だけのようで、視線を元に戻すとニヤニヤしているマスターと呆れ顔の美鈴さんがそこにいた。

「拗ねんなよ。俺だってお前と出かけたいから色々考えてる」

そして、隣の男はこちらを見ながら肩肘をカウンターにつき、私の毛先を弄びながら見つめるその表情とセリフにときめいてボーと逆上せていたら横やりが入った。

「見つめあってるとこ悪いんだけど、何か注文してくれないかな?」

「…空気読んでくださいよ」

「なら、…店閉めてやるから見つめ合うなり、キスするなり押し倒すなり好きにしろ」

マスターの冷やかしに真っ赤になる私と違い、五十嵐さんはいつもの冷たい眼差しで睨んでいるけど、マスターは素知らぬ表情で何か言い出そうとしていた。

そんなマスターの頬をつねるお怒り気味の美鈴さんを引き寄せ腰を抱きしめるマスターの甘い眼差し…

「たまには店閉めて、俺たちもデートしたいと思わないか?」

甘い声色に美鈴さんの頬が染まる姿に恥ずかしくて見ていられない。

それは五十嵐さんも同じだったようで、今度は逆に横やりに入れた。

「そういうことは客のいないところでお願いします」