優しい嘘はいらない


「…余計なことを…」

ペロリと舌を出し悪びれる様子を見せない美鈴さんを睨みつける五十嵐さん。

他の女性ならひるんでしまうだろう視線にも、美鈴さんは笑っていてマスターまでもが笑いを噛み殺している。

まさかの暴露に不貞腐れてタバコに火をつける五十嵐さんをかわいいと思ってしまった私は、イタズラ心が芽生えてしまった。

「妹じゃないじゃん…私とはデートらしいことしてくれないのに」

いじけたように拗ねてみたら、五十嵐さんは驚いた表情で口をポカンと開けた。

そして、口の端に咥えていたタバコが落ちていき、それを慌てて空中でキャッチしたが熱さに顔を歪め火をつけたばかりのタバコを灰皿に押しつけ消していた。

いつもの彼らしくない行動に笑みがこぼれる…が、すぐに形勢が逆転する。

「なんだ…拗ねているのか⁈んっ?どうなんだ?」

顎に彼の指先が添えられ甘い声色に変わり、俺様全開の色っぽさをダダ漏れさせて見つめてくる。

男の半端ない色気に頬が熱くなるのを止められない。

助けを求めて目の前の2人を見ても苦笑するだけで、傍観するつもりらしい。

諦めて目を彷徨わせながら、素直に頷くと唇を温かい温もりが触れ離れていった。