いつか街中で会えたら、なんて。きっとどれだけ思っても会える確率なんて低い。


それでも私は今日も待ち続ける。




「ちょっと〜えり〜まだ帰んないの?16時からここにいるけどもう軽く2時間は経ったよ?」



「りのちゃん!私はまだ帰んないから先に帰ってていいよ〜いつもごめん!」



「全く…えりはほんとに一途なんだから…相手が相手だけど。」





はじめまして。私は高校一年の宇佐美 えり と申します。以後、お見知りおきを。笑


さっきから一緒にいるのは親友のりのちゃん〜
黒髪ロングの美人さんです。




で!さっきから私がどこにいるかというと…
そう!CDショップですよ!!!!




なんでってそりゃあ好きなバンドのCDが発売されたからもしかしたらショップに来るかも?って少しは思うでしょ!!




…って言っても一度も遭遇したことはないわけなんですが……とほほ…




「んー…そろそろ帰るかぁ…なんかお店の人にも見られてるしな…笑」


今日も会えなかった。どれだけ待てば会える?時間じゃないのは分かってるけどどうしても…





私がこんなにも身を削って(笑)待っているバンドはそれはもう有名で。知らない人はいない。




外に出るとどでかい電光掲示板にライブ映像が。





『FAKEのベース!Kyoya!続いてドラムス!Masa!』





『そして最後は……ギターボーカル!Yohei!』







ほんとに。息をのむほどかっこいい。


手の届かない存在なのは分かっている。





けど……



「会いたい……」


前にりのちゃんに、会ってどうするの?と聞かれたことがある。



それは…私にも分からない。会って何か話したいわけではない。ただ…



ただ…直感的に…この人と繋がりを持ちたいと思った。






「私って馬鹿だなぁ…」


苦笑いでポツリとつぶやく。









その時ーーーーー・・・





ドンッ!!!!!!



「わっ?!」 「おっ…と…」




うわ〜〜〜下向いて歩いてたから前見てなかった!恥ずかしい、、、






「すみません…」





「いや、こっちこそ前見てなくて…」





「っーーー!!!」







この声、聞いたことある。








パッと顔を上げると……





「洋平だ……」




「えっ?」





「あっ…えっと…もしかして谷原洋平さんですか?」





「そうだけど?ていうかフルネーム(笑)」





にこっと笑った顔が衝撃的すぎる。普段はあまり笑わないのに……






「あのっ…今日もずっと待ってて…あっ!待っててっていうのは変な意味じゃなくてっ!」





「変な意味にしか聞こえない言い方だね(笑)」





「ちがっ…くて…えと…CDショップで待ってたら会えるかなぁって…毎日…」





段々自分で言ってて恥ずかしくなってきた。ていうか私はいま何言ってるの?頭がうまくまわらない。






「それって…普通にファン…ってことで合ってる?」





「そっそうです!ファンです!!!」





「ブッ…!君面白いね〜普通に言えばいいのに!(笑)」





「かっこいい……」





目の前に本人がいる現実をやっと理解した私は見入るように見つめる。





ああ、ほんとに顔小さいんだな


鼻筋もスッとしててかっこいい


1ミリもかっこよくないところなんて……





「あ、あのさ?君全部口に出てるよ?//」



「へっ?!」



自分にしてはすっとんきょうな声が出たと思う。


「さすがに俺でもそんな褒められたら恥ずいよ?////」



「でっ…ですよね!!!思ったことがつい口に…すみません////」





き、気まずい…さっき会ったばっかなのになんでお互い赤面で照れているのか…






「あのっ…写真とかいいですか?」




「もちろん!撮ろう」






やっと会えたことを記念に残したくてダメもとで言ったんだけど二つ返事でオッケー。なんて優しい…






「俺がインカメで撮るよ」

「あ、お願いします!」




スッとスマホを洋平さんに渡す。




「じゃあいくよ〜はい、チー「ちょ!ちょっと待ってください!!!」



「えっ?!どうした?!」



「あのあのあの…手っ!手の位置がおかしいっ」

「?!?!?!」





洋平さんも動揺してたらしく、なんの癖かは考えたくなかったけど癖で私の腰に手を回していたらしい…




「ごめん…なにやってんだ俺…」



「いえっ…普通に!普通に撮りましょ!」




その後普通に写真を撮りました(笑)






「じゃあ俺はこれで…なんか面白い子に会えたから楽しかったよ(笑)これからも応援よろしくね!」



あ…このまま…このままだと二度と会えないかもしれない。



洋平さんは、じゃ!っといって手をヒラヒラしながら立ち去ろうとした。






「あのっ……!!!!」




し、しまった。やってしまった。
私は反射的に洋平さんの服の裾を掴んでいた。





「えっ?どうしたの?」





このままじゃ終わっちゃうから。どんな形でもいいから彼と繋がっていたい。





「連絡先交換しませんか?!」

「えっ……?!」


ハッ…!!!!!!






や、やばい。芸能人に言ってはいけないことナンバースリーには入っているだろう非常識発言をしてしまった…





「……いいよ」
「ですよね、すみません非常識で…」



「え?」
「はい?」






え?この人今なんて……





「俺ら話が噛み合ってない?笑」


「れ…んらく…さき…えっ?!」




びっくりしすぎて言葉がおかしいよ〜〜







「ほんとはダメだけど。俺もキミのこと知りたくなったから。ヒミツね?」


「つーーー!!」




そんな首かしげて人差し指を口にあててヒミツね。なんて…





そうこうしてる間に洋平のLINEをゲットしてしまった…



「ほ…ほんとに洋平さんのアカウントなのか信じられない…」

「じゃあなんか送ってあげよーか?笑」

「えっ!!!」



小さい声で言ったつもりだったんだけど!恥ずかしい!!!





ピコン!





「わっ…!ほんとに洋平さんのだ…!!」

「どこに感動してるの(笑)かわいいね」




かわいいーーー?!?!なんちゅー殺し文句を…




「でも連絡先交換しても使うタイミング無いですよね…すみません、一般人とこんなこと…」

「使い道ならあるよ」

「え?」

「俺からLINEするし」

「ええええ?!?!」

「いいでしょーっ!別に俺からしても!笑」

「もちろんです!!