「もう依頼人来たのか。早くないか?」
 率直に思ったことを言った。
 救済部が認められたのは一昨日だ。
 昨日は部活をしてないとモモは言っていた。
 だとすれば部活初日から依頼人が来たことになる。
 ならなぜ依頼人が来たのだろう。
 そんな僕の疑問をほたるの一言で一掃する。
 「昨日、モモが帰った後、私と青山で救済部のチラシを街で配りまわったからね」
 感謝しろと言わんばかりに誇らし気にピースをしてくる。
 「お前らは他にやることはないのか。暇人どもめ。やることないなら勉強しなさい。まったくもう。」
 後半らへん、ついお母さん口調になってしまう。
 「それ難波も言ってた。難波もチラシ配りしようって言ったらそんなことする暇あるなら勉強するって」
 笑いながら話す青山。
「ああ・・・・・、言いそう」
笑いながら納得していると視線を感じ背筋がぞわぞわする。
視線を感じる方へ視線をずらすと人を殺しそうな冷たい目でこちらを睨んでいた。
いや、この目は確実に何人か殺している目だ。間違いない。
「何かおかしいかしら。バカにされた気分なのだけれど」
「いや、別に。確かに難波なら勉強しそうだなって思っただけ・・・・・・」
ものすごい速さで目が泳いでしまう。
目が回って酔ってしまいそうだ。
「そう、ならいいのだけれど」
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことだろう。
身体の筋肉が萎縮して身動きができず、呼吸すらするのを忘れてしまっていた。
なんで俺の周りには怖い女ばっかりなんだ。
自分の境遇の悪さに落胆する俺をよそにほたるが話を進める。
「依頼内容はもう聞いたの?」
「ええ、身体が入れ替わるそうよ」
「あはは、そうみたい」
バカにした感じは一切なくありのままを受け止めて平然と話す難波に比べ、信じられないというように苦笑いを浮かべる青山。
「身体が入れ替わるってそんな漫画みたいなことあるの?ねえ、モモ」
ほたるも信じられないと言いたげにモモに同意を求めようとするが顔が青ざめて反応がない。
「俺とモモも昨日身体が入れ替わったんだ」
モモの代わり話す。
「まったまたー。そんな演技までしても騙されないからね」
ほたるが信じないのも無理はない。
人は自分が見えるもの、体験したものが全てだと思い込み、それ以外は信じようとはしない。
「えっ嘘なの。危なく信じるとこだった」
青山は例外らしい。
こうも初っ端で挫かれると先が語りづらい。
バカもここまでいくと殺意を覚える。
かと言ってほたるを説得できるだけの武器も持ち合わせていない。
情報が少なすぎるしほたるが信じないなら信じないで別にいいだろう。
後でどうとでも言い訳できる。
青山に関して言えばうそぴょーんの一言で解決するだろう。
とりあえず情報収集が先だ。