神様の敷いたレール

「なあ、モモ俺が人間嫌いだってこと話したっけ?」

茜色の夕日を窓越しに見ながらどこか遠くを見つめながらさらっと言う【水月】。

普段なら冗談で済ませる話だが夕日に陰る【水月】の顔が冗談ではないとどこか伝えている気がした。

「聞いたことないけどそうなの?」

「うん」

真剣に答える【モモ】に対し、気のない返事をする【水月】。

「子供のころはそうでもなかったんだけどね。ほら子供ころって何も知らないから。会う人全部、世界のすべてが無条件で自分が好きなんだからみんなも好いてくれてる。そう思ってた。でも無知って必要なんだよ。モモ・・・」

真剣な顔で名前を呼ぶ水月。

自然とモモにも緊張感が伝わってくる。

正直、水月の真剣な顔はあまり見たことがない。

あまりというよりもそもそも水月は決して物事に対して決して本気で取り組まない。

いつもどこかふわふわしていて息をふぅ~と吹きかけるとたんぽぽの綿毛のように風に流されて遠くに飛んでいってしまいそうなくらい軽い。

それが誰もが思う『麻倉水月』の人物像である。

当然モモも例外ではなく普段決して見せない真剣な顔をする水月に対し、ただならぬ鬼気迫ったものを感じた。

時計の秒針の音だけが鳴り響く。