神様の敷いたレール

外した後、僕は床に座り込んだ。

 死にそうだった恐怖もなく生きている安心感もなく、かと言って自殺が失敗した嫌悪感もない僕は脱力感でいっぱいだった。

 ぼうっとした意識の中で時計をみると首を吊ってから20分経っていた。

 鏡を見ると目は真っ赤に充血し顔は血が溜まってパンパンになっている。

 瞼は2倍以上腫れぼったくなっており、下唇はえぐれて血が出ていて床には大量の血が広がっていた。
 
 唇の傷跡は前歯の形と一致した。紐が切れて下に落ちたときに噛んでしまったのだろう。
 
 クローゼットのあちこちにも血がついている。

 おそらく暴れたときに血がついてしまったのだろう。

 首にはくっきりと首を吊った跡が残っていた。

 この醜い姿は自ら命を絶とうとした罪の罰なのだと思った。
死ねなかったことよりこの状態をどう言い訳しようか考える。

 結果的には首を絞めて気絶して遊んでいたら途中で紐がほどけなくなり親にハサミで切ってもらうまで血が止まったままだったのでこの状態になってしまったのだと話した。
 
 僕は一人暮らしなのだがみんなはこのことを知らない。

 だからみんなは簡単に信じてくれた。

 こういうバカなことをしそうな人間として思われている僕を誰も自殺未遂とは思わない。

 みんなの知っている『麻倉水月』は恋も悩みも無縁の何も考えていない人間。
そう思われている。

 思い込みとは怖いもので一度思い込んでしまうと多少の変化では思いこまれた考えは覆されない。