えっと...この人は確か...



「さっ、狭山!!!」


相手が驚いたように目を見開く。

しまった。

「あ、ごめ...狭山くん、だよね?」

そうだよ、と頬を緩めて笑う。


「俺の方こそごめん、さっき呼び捨てで呼んじゃって」

やっぱりさっきの声は狭山くんだったのか。
クラス全員分の名前覚えておいて良かった。

「橘さん、って呼んでる間にぶつかってしまうなーと思って。間に合わなかったけど」

立てる?と貸してくれた手にありがたく掴まることにした。


「教えてくれてありがとね、紫乃でいいよ」

「おう、俺は千聖って呼んで」


ちひろって読むのか。



「ところで白石さんと奏多はどうしたの?」


...やばい、忘れてた。

慌てて振り返ると、藍莉と奏多が立っていた。
奏多の方は若干怒っているように見える。


...ん?あれ?
千聖いま奏多のこと呼び捨てに...


「紫乃ちゃ〜ん?」

ビクッ。

「ブツブツ言いながら足早に歩いていったと思ったら何なんだよこの状況は」

「あー、ごめん......」

「しーちゃんおでこ大丈夫?赤いよ?」

「大丈夫だよ、何ともないから」


心配してくれてありがとね、と藍莉の頭を撫でる。

藍莉はほんと可愛いなぁ...。


「それにしても凄いね、雨...」

「さっきよりはマシになった方だろ」

「奏多が一本しか持ってないから帰れないんでしょ」

「いや忘れたのお前らだかんな!!」

「あ、傘入る?」


千聖がサラリと言う。






「「「ありがとうございます」」」


即答。