目を覚ますと、私は河原にいた。
(あぁ、なんだここで寝てしまっていたんだ。)
ゆっくりと身体を起こす。
(今、何限目だっけ?)
携帯電話で時間を確認しようとして、やめた。
今日は学校まるまるサボることにしたんだった。
でも、今日は午後から雨が降るらしいから適当に駅に行って、いつも学校から帰ってくる時間に迎えに来て欲しいって言う連絡を親にするんだ。
それで時間つぶしに河原へ来て、眠くなって寝たんだった。
そろそろ雲行きがあやしくなってきたから何処か長居できる店に入ろうか。
そんな事を考えはじめた。
その時だった。
〝ねぇ、君今ひとりかい?〟
目の前に突然現れた黒猫が私を見て言った。
「…ひとりだよ。」
私は不思議とその時さほど驚くこともなく、自然と黒猫の問に応えた。
〝そっか、僕の名前はノラクロ!よろしくね。〟
私の答えにノラクロはどこかホッとしたように言った。
「ノラクロ?」
〝うん。ノラのクロ猫だからノラクロ!…いつだったか、僕のご主人がつけてくれた名前。〟
嬉しそうにしっぽを揺らしながらこたえるノラクロに私は、随分と安直な名前だと思った。
「私に何か用?」
そう尋ねたのは、何故だったか。
私もよく分からない。
〝あ、そうだった。忘れる所だった。〟
尋ねた私にノラクロは少し慌てた様に説明し始めた。
〝今君はね、夢の中にいるんだ。でもここは現実なんだ。〟
一体何を言っているのだろうか。そう思ったが、私は黙って聞くことにした。
〝君がもしここから出たいと思うのなら、僕は全力で君のお手伝いをするよ。〟
〝でも、君が何もしないというのなら僕は何も出来ない。〟