〝ねぇ、君今ひとりかい?〟
目の前に突然現れた黒猫が私を見て言った。
「…ひとりだよ。」
私は不思議とその時さほど驚くこともなく、自然と黒猫の問に応えた。
〝そっか、僕の名前はノラクロ!よろしくね。〟
私の答えにノラクロはどこかホッとしたように言った。
「ノラクロ?」
〝うん。ノラのクロ猫だからノラクロ!…いつだったか、僕のご主人がつけてくれた名前。〟
嬉しそうにしっぽを揺らしながらこたえるノラクロに私は、随分と安直な名前だと思った。
「私に何か用?」
その時ご主人とやらがいるノラ猫に関心を持ったのか、猫が喋ることに関心を持ったのか、はたまたただの条件反射で尋ねたのかは分からないが、きっとここからだったんだ。
―ここから私の人生は大きく変わっていったんだ―