ぼっちな彼女と色魔な幽霊


ヨウは校舎を足早に出る。

「ちょっと早いんだけど、なんかあったの?さっきの絵はいいの?」

小走りでようやくヨウに追いついて訊いた。

「なんもなかったけど、わかったことがひとつだけある」

「なに?」

「ああやって絵を描いてる奴らを見て、なにも感じないのが不思議だった」

「えっ?」

「あの都市伝説が本当だとするだろ?
だけどそんな俺なのに絵を描きたいって欲がまったく湧かなかった。
あの人魚姫の絵だってそうだ。
だから、俺はもう絵を描きたい、完成させたいっていう未練はないんだと思う」

「……じゃあ」

「だから、未練は絵を描ききるってことではないってことだ。それだけは、はっきりわかった」

ヨウはポケットに片手をつっこみ、肩を落とす。少し気落ちして見えた。

少ない情報。それさえ否定するってことは、手がかりは何もないってことになってしまう。