ぼっちな彼女と色魔な幽霊


そう思っていたけど、ひとりの子が、「体育館の真ん中で校歌の替え歌をすると呪われるって聞いたことはあるけど」と言うと、こそこそ打ち合わせするように部員達は顔を見合わせる。

「何それ。何に呪われんの?」

「知らないよ。校歌の歌詞書いた人とか?」

「校長じゃない?」

「いや生きてるし」

「だよね」

「あっ、あたしは、三時三十三分三十三秒に開けてはいけない扉があるとか聞いたけど。幽霊に扉の中に引きずり込まれるんだって」

「えっ!扉ってなんの扉?」

「わかんないけど」

「生物室の隣の空き教室とか怪しくない?いつも鍵かかってるしね」と、内輪で盛り上がりはじめ、訊いたわたしがおいてけぼりになってしまった。

それにしても、どこにでもありそうな学校の七不思議みたいだ。信憑性は低いだろうな。そもそも美術室の幽霊とは関係はないだろう。

すると会話に加わらず黙っていた奥のメガネの女子が、「美術室の都市伝説みたいなの、聞いたことあるけど」と口を開いた。隣にいた女子が「部長」と呟く。

「美術部員の男の子の幽霊の話。
学校の女の子をモデルにして絵を描いてたんだけど、事故で亡くなって完成できなかった。
それが心残りで、絵を完成させたくて美術室にでるっていう」と、笑いもせず真面目に答えてくれた。

「ど……どういう男の子だったんですかね?」

「さあ。その話はそこまでしか知らないからね」

そう言うとわたしから目を逸らした。話はここまでという雰囲気になにも言えなくなった。

そりゃそうか。都市伝説とか言っていたもんな。

そこまで知る由もないか。