「書けた」
「よしって、俺の字じゃねーのバレバレ。また怒られるかも」と、日誌を受け取りながら二嶋くんは言う。
「あ。わたしも行くよ」
「先帰っていいよ。かめちゃんに言われたの俺だから」
「でも……」と、言うと、躊躇いがちに二嶋くんは口を開いた。
「あのさ、西宮さんって好きな人、いる?」
真っ直ぐな視線。冗談の答えじゃなく、本心の答えを求めているような。
だけど、突然なんだろう。
なんでそんな質問をするの?
「えっ?」
言葉に詰まりながらも、いないかな、と答えた。
「本当?」
「ほ……本当」
「良かった」と、気の抜けたような表情をする。
「なんで?」
「いや今日の朝、思いつめた顔で言ってただろう? 葛西さんって」
ちょっと頭の中を巻き戻してみる。



