ぼっちな彼女と色魔な幽霊


お弁当を取り出し、蓋を外す。

「頂きます」と、呟いてみたけどヨウの視線が気になって仕方ない。

すっとウィンナーをつまんで食べるヨウ。

「あっ」

「作らない、ひな子が悪い」

「……言ってくれたら良かったのに」

「明日から作れよな」

「わかった」と、断ったら面倒くさそうなのでしぶしぶ承諾した。

「昨日のツナマヨうまかった」

「……」

「あと好きなのは、タラコと鮭とかかな。お前は何派?」

「……明太子」

渋々答える。なんで好きなおにぎりトークをしなきゃいけない幽霊と。

こうしている間にも、卵焼きやハンバーグがヨウの手によってつまみだされなくなっていく。

「手で食べて汚い……」

「幽霊だからいいんだよ。汚れても勝手に綺麗になる」

「それは便利な機能をお持ちで」と素っ気なく言ってそぼろがのったご飯をすくう。

口元に近づけようすると、横からヨウが箸先に近づいて食べた。

「はっ……」

石のように固まってしまったのは、あまりに距離が近く驚いたからだ。

「なに?」

「なにって、言ってよ!」

「言ったら食べさせてくれるの。飯?」

幽霊にアーンなんてやれる気がしない。

「……自分で食べて!」と、箸とお弁当を差し出した。

「いいよ。もう腹いっぱいだから」と、伸びをしてから背中を壁に預けた。

なんだよ。優しくしたら突き放すのか。

もういいや、と、もくもくと食べることにした。