最後の一文に目を落とす。
主人公と生前関わりのあったおかみさんの一言。
『お酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも……ただ神様みたいないい子でした』
ズキリとする。
おかみさんの科白だけど、想像する。
きっと作者が言ってほしかった言葉だったんじゃないかと。
そして、自分自身に重ねてみる。
『友達がいても、いいえ、友達がいなくても、神様みたいないい子なんです』
……実に悲しい。
……暗すぎる。
……自分のことなのに。
「はぁ、太宰さん……」
切なさと希望の余韻に浸り、やっぱりいいなと顔をあげるといつの間にか二嶋くんがいてびっくりした。
目があう。
見られてた。
しかもわたし、独りで喋ってた。
頭が真っ白になっていると、「ごめん、日直ってわかんなかった」と、申し訳なさそうに二嶋くんは言った。
「ううん」と文庫本を鞄に閉まうけど、恥ずかしくて顔をあげられなかった。



