「この童話集持ってます」と簡潔に答えた。
「先生、話も好きだけどこのイラストレーターがすごく好きなのよ。美術部の子に見せたくて持ってきたけど、西宮さんも見る?」
そこで、かめちゃんは美術部の顧問だと知った。
だけどわたしは絵に興味もなければ、職員室の雰囲気だって苦手に感じる。早く出たかったくらいだったので、曖昧に首を振って逃げた。
教室に戻ってきたけれど、いつもより早く来てしまったから、SHRまで時間が長い。
こういうときは、必殺文庫本。鞄から取り出した。
もう少しで読み終わる。
せめてもの心づくしで、ブックカバーとしおりはお気に入りをつけている。
実は手作りだったりするのだけど。
今日もおはようとか聞こえるけど、どうせわたしに言われるものでもないから、もう気にしなくていい、今日から腹をくくることにした。
いつだって諦めは人を強くさせる。



