「へえ。これがお前の言う俺の心の鍵ね」
「いや、心の鍵じゃなかったかも……思ってたのと違う……」
昼休み。屋上の踊場でヨウと待ち合わせをして扉を開けた。
踏み込み、いつもと同じ場所にヨウを誘導し座ってみたけど何も思い出す気配はない。
ここで告白の返事をするって言ってたから、ここに来たら何か思い出すんじゃないかって少し期待してたのに。
でもここで残念がっても仕方ないと気を取り直した。
「お昼食べよっか?おにぎり、握ってきたよ。ヨウの好きなツナマヨ」
手渡すとまじまじと眺める。
「あと好きなのは、タラコにシャケだったよね」
明るく言ったつもりだったのに、ヨウはふっと笑うと
「いらねー」
と、わたしに投げつけるように返した。
受け取りそこねて、手をはじき転がっていく。
「松井にでも訊いたの?気持ち悪くて食えねーだろ」
『ひな子のツナマヨうまし』
そう言って微笑むヨウの顔が、滲んでいくみたいだった。
滲んで、滲んで、わたしには見えなくなる。
そっか。ヨウはもういないんだ。
同じ顔や声をしているけど、別人なんだ。
わたしの好きな人はもういない。死んじゃったみたいな感覚に、胸が苦しい。



