「あっ……」
花愛先輩も、わたしを覚えているのか、「今日、当番だったんだ」と、笑いながら本を差し出した。
「そっ、そうなんです。返却ですね」
そこで視線に気がついた。
入り口の近くの本棚にもたれかかるヨウの姿を。
たぶん、きっと、先輩を待ってる――。
どうしよう――。
こんなに近くで二人がいるのを見たことがなかった。
一緒に帰るのかな。頭ではわかっているのに目の当たりにしたせいか、ドキドキがおさまらない。
動揺してるのがわからないように、受け取って、返却処理をする。
顔あげれない。先輩の顔もヨウの顔も見れない。
「返却ありがとうございました」
本をトントンとまとめながら、どうにかその言葉だけ口にできた。
「西宮さん」
「はっ、はい」
「色々、ありがとう」
その言葉で顔を上げると、先輩は微笑んでいた。
ありがとうの意味がわからなかったけど、少しして、わたしがヨウのことが好きだと先輩に告げたことを思い出した。
幽霊のヨウに会ったことも。
先輩は、わたしの話をどこまで信じているのかわからないけど、ありがとうの中にはごめんねも含まれているような優しい言い方だった。
付き合って、ごめんね――。
そういう意味の。
わたしは頷くのが精一杯だった。
「領、ごめんね」と先輩の声が聞こえた。
「うん」
視界の端に二人が見えて、ヨウが先輩の手を握って、扉をあけた。



