ぼっちな彼女と色魔な幽霊

もう本当に知らない。知らない。知らない。知らない。

人魚姫の王子もヨウもばかだばかばか。

助けた人を間違えるなんてね、見る目ないのよ!

って、わたし別にヨウのこと助けたわけじゃないのか。

ヨウだって気をもたせること言ったけど、好きだって言ったわけじゃないし。

色魔だから、あんなこと簡単に言えたんだ。



「ごめん! あたし急遽バイトになっちゃって。先帰るね。先生来たら、適当に言っておいて!」

才伽ちゃんは、放課後の図書室のカウンター当番を早めに切り上げると急いで帰ってしまった。

まあ、忙しくはないから、ひとりでも大丈夫なくらいだけど。

カウンターに両手を置き、顎をのせ伏した。

ヨウと初めて会ったのは、図書室だったな。

わたしが本を戻そうとしたら、床に座っていたヨウに、落としちゃったんだっけ。

恐かったな、あのときのヨウ。

くすりと笑いが込み上げてきて、すぐ空しくなる。

どうして、楽しいことは思い出にしかないんだろう。

わたしが思い描いていた未来は、こんなはずじゃなかったのに――。

「お願いします」と言われて顔を上げた。

花愛先輩だった。