ヨウは小さく頷いた。

「ああたぶん妹だ。

『兄ちゃん、良かった生きてた』って泣いてたからな。

きっと俺の顔を見て、死んだんだと慌てて病院に引き返したんだろうな。

だから俺、声かけ損ねたんだ。

今俺を見たら、すごい混乱させてしまいそうで、できなかった。

そうじゃなくてもきっと疲れさせてるに違いないのに。

だから妹が帰るまで隠れてた。

それから部屋の中で幽霊の俺と変な管をつけて眠る俺と二人きりになって、変な気分だったな」

「言ってよ」

肩の力が抜けた。ひとりで駆けずり回って無駄なことしていたんだ。

「まさかお前がそんなことするなんて思わなかったし、俺だって自分の中で整理できないことがあったから言えなかったんだよ」

「整理できないこと?」

「俺の身体に触れたら、俺が身体を離れたあとの世界のことだけ、思い出したんだ」

「なにそれ……」