「おっそ」
わたしはヨウに言った。放課後の教室で一人本を読んでいた。取り壊される高校の卒業式を描いた短編集。
「重役出勤」
「高校生に重役もある? もう放課後だよ?」
「そう言って俺を待ってたんだろ?」と机に腰をかけた。
「んなことない」
「飯」と手を出す。早速ふてぶてしい。
「おにぎり悪くなって食べれないかもよ。幽霊もこういうのでおなか壊すのかな?」
「知らねー」
「ヨウ」
「ん?」
「とりあえず、屋上行かない?」
「いいよ。なんか身体がっちがちだ」と、立ち上がり腕を伸ばした。羽を広げるように悠々と。
どこか窮屈なところにでも閉じ込められていたみたいだ。
「幽霊のくせに」
「うっせ。ああなんか空見てーな」
笑う。なんか眩しい。



