ぼっちな彼女と色魔な幽霊


先輩、やっぱりわたし先輩は人魚の娘に似ていないと思います。

だけど先輩の描いた人魚の娘の絵には、今、似ているなって思いました。

だって思うんです。

きっと冷たい北の海の底に帰った人魚は、人間に裏切られたと嘆き悲しんで暮らしたのかもしれない。

だけどきっとおじいさんとおばあさんと暮らした温かい思い出も抱えていて、憎みきれなかったんじゃないかって。

よく言うじゃないですか、恋人と別れると良かったことしか思い出さないって。それときっと同じです。

大切な人間を嫌いにならない為に、思い出は優しい色に塗り替え、綺麗に見せるんじゃないかって。

わたしは思います。

裏切られた。捨てられた。

だけどそれでも人間を信じたいとあの人魚は、悲しみ嘆きながら、心の中で愛情の火を燃やしていたんじゃないかって、そう思う。

冷たい海の底で、深く。熱く。

今、先輩がヨウを思う気持ちとあの絵の中の人魚の気持ちは一緒じゃないのかなって。

ラブレターみたいです。

そう思いました。