「あの幽霊って信じますか?」
わたしは静かに訊いた。心に負担をかけないようにと意識はするけどできてる気はしない。
「幽霊?」
先輩は、首を傾げる。
「信じてもらえないと思いますけど。
実は最近、男の子の幽霊が見えるようになったんです。
でもその幽霊は、自分の名前も生きていたこともなにも覚えていなくて、
自分のことや、成仏する方法を知りたくて、さ迷っていたんです。
それで、その子が言ったんです。
花愛先輩の描いた人魚の絵を知ってるって。
あと赤い蝋燭と人魚の本を渡しながら、人魚の娘に自分が似ていると言った誰かを思い出すって。
それが彼の正体を突き止められる唯一のヒントだったんです。
だからもし……その男の子に心当たりがあるなら、何か教えてください。
心残りになりそうなこととかもしあれば、知りたいんです。
わたしどうしてもちゃんと成仏させてあげたくて」
「からかってるの?」
冷たい声だった。
それはそうだ。
こんなの誰が信じるか。
もっと上手な訊き方があったかもしれないと、考えもなく言ってしまったことを後悔する。



