「……唐突ですみません」
「……んで知ってるの?」
「えっ?」
「わたしと領(リョウ)しか知らないこと、なんであなたが知ってるの?」
睨むようにわたしを見た。
リョウって誰?
その人が先輩の絵を見たことがあって、人魚の娘と似ているって話を知ってる人か、と遅れて理解する。
じゃあヨウの本当の名前?
ならやっぱりヨウの探していた人は花愛先輩だったんだ。
やっとヨウの名前と会いたかった人を見つけられたんだ。
これで成仏できるかもしれない。
そんな喜びが顔に出てしまったんだろう。
先輩は顔を歪ませた。ひどいものでも見るように。
不謹慎。それはそうだ。
だってわたしは生きてるリョウを知らない。
知っているのは死んでいるヨウだ。
リョウよりもヨウを大切にしたいと思っているくらいだ。
でも先輩は違うんだ。リョウを亡くしているんだ。



