わたしは言葉を溜めた。
だって想像する。
ヨウにとって先輩は大事な人だった。それは確かな思いだ。その関係は何だろうと、想像する。
部長さんが言った彼氏みたいな男の子って誰だったんだろうって想像する。
そうしたら先輩とヨウの関係は……泣きたくなるくらい切ない。
しかも亡くなったのは、最近だろう。
先輩だってひどく辛いはずなのに、その傷にツバでもかけるようなものだ。
そんなこと普通はできない。
でも嫌われて傷つけてしまっても、知らなきゃいけない。
ヨウの成仏はきっと先輩の為でもわたしの為でもあるんだから。
「あの……訊きたいことがあるんです。
もしかしたら先輩にとってすごく辛いことかもしれないんですけど。
わたしにとってもすごく大切なことなんで知っていたら教えてください。
先輩の人魚の絵を見たことがあって、
先輩が赤い蝋燭と人魚に出てくる娘が自分みたいだって話した人っていますか?
ここの学校の男の子で」
そういうと、穏やかな水面みたいな先輩の瞳が動揺したように揺れた。



