「探してなかったんですか?」
「探してないよ」
「文化祭に展示して途中で盗まれたのにですか?」
「犯人は察しがついてたから。部長から聞いたの? わたしがこの絵描いたって」
返事につまってしまうと、「大丈夫。告げ口みたいなことしないし、わたしはあの人に仕返しみたいなこともする気はないから」と微笑んだ。
「あの人、入部当初からわたしのことが嫌いだったみたいで、わたしの描いた絵に落書きしてるのを見かけたことがあったの。
だからそうなのかなって思ってた。
わざわざ隠した人を調べてくれたの?
でもなんでわかったのかな?あの絵、見た人も少ないし、盗まれたなんて誰にも言ってないのに」
「隠した犯人を調べたかったわけじゃないんです。
わたしずっとこの絵を描いていた人……というか人魚の娘を探していたんです。
そしたら偶然、絵が隠されたってところにたどり着いちゃっただけで……」



