ぼっちな彼女と色魔な幽霊


わたしのことなんか覚えてないかもしれないと思っていたけど、クラスメイトに呼ばれ廊下に出てきた花愛先輩は、「図書委員の子?」と、わたしを見て親しみを込めたような微笑みを向けてくれた。

話があることを告げると、「この前の図書室便りのことかな?」と明るい顔で訊かれた。

わたしは相手に伝わるだろうって自覚できるくらい緊張していた。

「あの……ちょっと違うんですけど。先輩に訊きたいことがあるんです。赤い蝋燭と人魚のことで」

「赤い蝋燭と人魚?」

先輩は、きょとんとする。

「先輩が去年の文化祭に出した絵のことです。良かったら美術室まで来てくれませんか?」



美術準備室の扉を開け、人魚の絵を手に取る。

花愛先輩には、美術室の中で待ってもらっていた。

「あの……この絵って先輩が描いたものですよね?」

「……」

「美術準備室に隠されていました」

「そう」と、呟いた。特に驚いた顔もしなかった。