彼は床に足をつけると、うなだれた。
「ごめん。俺もなんかパニックになって、だから勝手にこんなところまで着いてきてしまったんだ。嫌な思いさせちゃったみたいで、ごめん」
シュンとした顔で申し訳なさそうに謝るから、「……嫌な思いをしたというか、なんて言えばいいのか」と、言葉に困ってしまいさっきまでの勢いをなくしてしまう。
男子との会話経験値が低いわたしは、売り言葉に買い言葉がないと、うまく話せない。
「ひな子ちゃん」
「はい?」
「おいで」と、彼は腕を広げた。
「……な……何を?」
そう思っているのに、なんだろうこの人。
なんか色気がある。
制服着てるけど、なんかすごく大人っぽいし。
引き寄せられるように彼の目の前まで来てしまった。
「なんですか?」と言うと、わたしの腕をとり足の間に座らせる。そのまま後ろからギュッと抱きしめた。
そして、そっとわたしの首筋を指の腹で撫でた。



